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2020.08.04

会計・税務

「翌期の費用の前払い」が今期落とせるとは限らない①

●翌期の費用を前払いすると経費で落とせる?

「翌期1年分の費用を前払いすれば、払ったときに経費で落ちて節税になりますよ」という話を税理士から聞いたことがありませんか?「短期前払費用」といって、公式に認められている手法ですが、意外に勘違いが多く、実は落ちないケースが多い論点でもあります。

さて、3月決算法人の以下のケースには、今期の費用で落ちないものが一つ含まれています。どれでしょうか。
① 翌期1年分(4月~3月)の家賃を3月末にまとめて支払った
② 4月分の家賃を3月末に先に支払った
③ 4月15日の宿泊代を3月末に先に支払った

●「前払費用」と「前渡金(前払金)」の違い

言葉は似ていますが会計的には明確に区別されています。

「前払費用」とは、「継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、事業年度終了時点でまだ提供をうけていない役務に対応するもの」です。いわゆる「経過勘定」と呼ばれるもので、時の経過とともに費用化していくのが原則です。
(具体例:リース料、保険料、支払利息 など)

一方の「前渡金(前払金)」は、商品代金や一時の役務を受けるための代金を先に支払ったものをいいます。
(具体例:仕入代金の前払い、外注加工費の前払い、ホテルの予約金 など)

対象の役務提供を受ける時期について、具体的にいつというわけでもなく一定期間継続的に提供を受けるものと、時期が特定できるもの、と区別していただくとわかりやすいと思います。

●回答

「短期前払費用」の通達は「前払費用」であることが前提です。
その上で、1年以内の費用かつ継続処理を条件に、支出時に費用処理することを認めています。

以上からすると、③4月15日の宿泊代は、「前渡金」に該当しますので、「短期前払費用」には該当せず、今期の費用で落とすことはできません。

翌期の費用を前払いしたものの、「落ちると思っていたのに落ちない!」ということがよくあります。事前に税理士によく相談してから検討するようにしてください。

(参考)法人税基本通達2-2-14 短期の前払費用

前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)

(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。

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